2021年2月5日金曜日

「あの頃に生まれていたらよかった」は本当か

 こんにちは。果報は寝て待て、てくねちおです。


 私は1970年代から1990年代中頃にかけての日本のポピュラー音楽が好きなのですが、そうであるがゆえ、「その年代に学生時代を過ごしてみたかったなあ」と思うことがあります。音楽に限らず、そういう考えを持つ人は少なからずいるようです。でも、その感覚は正しいようで正しくないように思うのです。



 今はインターネット全盛の時代と言われています。全盛とは言いますが、これからもっとインターネットの力が増していくかもしれません。それはそれとして、最近、インターネットを介して行われるデータベース(人工知能)に基づいたレコメンデーションがもたらす出会いの機会が増えているように思います。YouTubeのレコメンデーション機能によるシティポップ旋風(そんなもの、あったか?)がその好例でしょう。


 私は、ティーンエージャーの頃にイエロー・マジック・オーケストラ(YMO)の楽曲に出会い、それを出発点として、1970年代から1990年代ごろの電子音楽、インストゥルメンタル音楽やシティポップ的な楽曲にずぶずぶとはまっていきました。その中で、1970年代に学生時代を謳歌できていたらどれだけ楽しかっただろうか、と考えたことがよくあります。今でもよくそう思います。


 しかし、冷静になって考えてみると、実際にその時代に学生として過ごしていたとして、果たして同じようなジャンルに邂逅することができていたのか、はなはだ疑問に思うのです。今はインターネットが普及していて、昔の楽曲でも少し検索してみればたくさんの情報を掘り出すことができます。信憑性はともかくとして、個人ブログまで食指を伸ばしてみれば、オフレコ的なマニアックな情報さえ簡単に手に入れることができます。動画サイトのコメント欄にもそういうことが書かれていたりもします(そういうのは往々にして間違っているのですが)。実際、私はそのようにしていろいろな楽曲・音楽家に出会ってきましたし、それらや彼らの様々な情報に触れてきました。


 では、その当時に、今と同じような知識を得ながら彼らの楽曲を聴き、彼らの活動を楽しむことは可能だったのでしょうか?

 やってみなければわからないような話ではありますが、それはきっと難しかったのではないかと思います。特に、東京以外の地方に住んでいる人たちにとっては。レコードショップに入り浸り、ラジオで音楽番組にかじりつき、などしていれば話は違うかもしれませんが、そうであったとしても、情報収集にかかる労力が段違いです。


 強いて言うならば、運よく邂逅できていたならば、当時販売されていたレコードやテープを買うことができたかもしれない、とか、今はなきライブハウスで彼らが演奏している姿を肉眼で見ることができたかもしれない、とか、そういう可能性はゼロではないですね。しかし、現代でもまだそのきらいはありますが、昔は都会と地方とでは情報の伝達速度が全く異なったのではないかと思います。また、そうカジュアルに上京するわけにもいかなかったことでしょう。


 昔の隠れた名盤を(ひょっとすると違法アップロードなのかもしれないけれど)再発見し、当時よりも大規模な(それこそ世界規模の)コミュニティで楽しむことができているのは、インターネットが普及発達したおかげとしか言いようがありません。そう考えてみると、私はむしろ、現代に生まれてよかった、と思います。インターネット万歳!

……とはいえ、当時の空気を自身の肌身をもって感じてみたかったと思わないかと言えば、それは全くの嘘になってしまいます。人はわがままなものなのです。



 こんな記事を書こうと思ったのも、ほかでもない、YouTubeのおかげです。先日、YouTubeでシティポップの楽曲を漁っていたら、レコメンデーションにこんなアルバムが現れました。



 ジャズピアニストの福居良(1948-2016)が1976年に発表したアルバム、Scenery(シーナリィ)です。私はジャズにはさして明るくはないのですが、大変に良いです。ジャズの定番曲、Autumn Leavesの演奏も収録されています。お時間があるようでしたら、皆さんもぜひお聴きになってみてください。



 説得力のある文章が書けるようになりたい、てくねちおでした。



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