2023年5月21日日曜日

写真は光と影である 〜モノクロ写真の魅力〜

 こんにちは。あまのじゃくになりきれない、てくねちおです。

 「逆張りオタク」とかいうワードがありますが、昔ながらの言い方をすればこれは「あまのじゃく」だよなあ、とくだらないことをたった今思いました。私は子どもの頃から知ったかぶりをすることが多く、大人になってからやっぱりそれはよくないだろうと思い立って、今は新明解国語辞典を傍にこの記事を書いています。普段あまり使わない単語の意味を間違えて覚えていることが多いからです。それでも長年培ってきた知ったかぶりの癖は抜けないわけですが…。

 ブログを更新せずまた半年以上経ってしまいました。年々まとまった文章を書くのが苦手になってきていて、というのは言い訳にすぎませんが、昔からない集中力がどんどんなくなってきているような、そんな感じもします。更新が久しぶりになるとこうやって本題でない話題ばかりになってしまってよくないですね。

 ということで、今回のテーマはモノクロ写真です。



 去る4月13日、リコーイメージングから興味深い新製品が発表されました。モノクロ専用イメージセンサーを搭載したデジタル一眼レフカメラ、「K-3 Mark III Monochrome」です。これまで、モノクロのセンサーを搭載したレンズ交換式カメラはライカが出しているくらいでしたが、まさか国内メーカーから発売されるとは思ってもみませんでした(遡ってみれば20年以上前にモノクロ機があったことはあるらしいですが、最近の流れでは、ということでお許しください)。ミラーレス機が市場を席巻しているなか、レフ機にこだわりを見せるペンタックスらしさを強く感じる製品でもあります。メーカーのファンイベントで出されたアイデアが具現化されたのだそうですね。

 私はこれにビビッときてしまい、この発表を知った当日に予約注文をしてしまいました。その甲斐あって、無事(?)、発売日からまもなくして本機を手にすることができました。

ご尊顔。グレーの墨入れがアクセントです。

液晶モニタの左上には"Monochrome"の文字。

Voigtländer Apo-Lanthar 90mm F3.5 SLと一緒に。
モノクロ専用機にアポランター、意味はあるのか?


 このK-3 Mark III Monochromeは、その名のとおりK-3 Mark IIIをベースとしていて、イメージセンサーがモノクロ仕様になっていることを除けば、ハード部分はほぼ同じなのだとか。この点も私が購入を即決した理由のひとつです。ペンタックスのデジタル一眼レフは以前からファインダーが優秀な印象で、とりわけK-3 Mark IIIはAPS-C機の中ではファインダー倍率が高く、フォーカスも見やすいのが特徴でした。レフ機・ミラーレス機にかかわらず、カメラにとってファインダーの見やすさは極めて重要だと思っています。実際、ファインダーのよさに惹かれて、通常版のK-3 Mark IIIの購入を考えていたこともあったくらいです。私は初代のK-3を持っていて、拡大アイカップを装着して使っていたことがあり、これでもファインダーはずいぶん見やすい方だと思うのですが、K-3 Mark IIIではそれがさらにブラッシュアップされています。拡大アイカップはもう使わなくてよさそう、という感じですね。発売時期に10年くらい開きがありますし、厳しい比較をするのは酷かもしれませんが…(笑)。


 製品自体のレビューはプロフェッショナルの方々やこれまでに発表されている記事にお譲りすることにして(ここでしてもしょうがないので)、この記事では私がモノクロ写真について思うことについて、つらつらと書き連ねていこうと思います。(前置きが長いなあ)


 この記事のタイトルにした「写真は光と影である」という言葉は、私が尊敬するあるカメラマンが言っていたことで、とても印象に残っているので引用しました。まさにモノクロ写真にはうってつけな言葉であり、モノクロ写真こそがこの「写真は光と影である」を体現するのに適したかたちなのだと、私は思います。

 じゃあカラー写真じゃそれができないのか、と言われたらそんなことはありません。カラー写真を実現するために先人たちは多大な努力をかけてきたわけで、カラー写真で私たちが視覚する「原色」による表現ができることは、とても大きな利点をもたらしています。それを蔑ろにするつもりはこれっぽっちもありません。むしろ、そんなカラー写真があるからこそ、モノクロ写真のモノクロ写真ならではの魅力が生まれてくるのです。

 写真は「光」なしに撮ることはできません。当たり前ですが、光のあるところ(明るいところ)とないところ(暗いところ)があるから写真が撮れるわけです。光のあるところとないところのそれぞれを写しとること、光のあるところとないところの境界線やそのグラデーションをなぞること、これが写真を撮るということなのです。写真においては、光と影の境目の階調や、影の中に潜むさらなる陰影を汲み取って表現することがとても大事なことであると思っています。

 では、我々が視覚する「色」を写真から捨て去ることによって、そこに残されるのはなんでしょうか?私が思うに、そこに残されるのは「かたち」です。モノクロ写真では、カラー写真よりも物の「かたち」に意識が向けられると考えられます。また、物の配置、すなわち「構図」にもより目が向くようになるでしょう。物の「かたち」や「構図」について着目したいときに、モノクロ写真はそれをより浮き彫りにする効果があると思います。


 私はレンブラントやルノワールの絵画が好きです。レンブラントは「光と影の魔術師」と評されることがありますが(この謳い文句に惹かれたというのが大きい)、特に影の中の階調が豊かで、その表現に引き込まれるところがあります。反対に、ルノワールは光の表現が巧みであるという印象を持っていて、穏やかな陽光に照らされた情景に目を奪われます。レンブラントはバロック絵画、ルノワールは印象派絵画、とそれぞれ異なるジャンルの画家ではありますが、いわば表裏一体である光と影の表現がそれぞれ優れていると感じます。適切に説明する語彙を私は持たないのが悔やまれますが…。

 写真に関して言えば、私は硬調でローキーな写真を撮るのが好きです。それはまさしくレンブラントの絵画のような、暗い空間にある被写体を浮かび上がらせるような表現をしたいからです。一方で、ルノワールのような柔らかな光の表現にも憧れがあります。こちらはなかなか真似できなくて、もっと勉強が必要だな、と感じる次第です。


 光と影の表現を突き詰めていくと、やはりモノクロ写真がよい題材になります。色には色相・彩度・明度の三要素があり、ざっくり言えば、モノクロ写真は明度以外の二つを捨て去ることになるわけです(カラー→モノクロ変換は必ずしもそんなに単純な処理ではないと思われますが)。もちろん、色相や彩度によってもたらされる陰影の印象というのもあるわけですが、光と影の対比という観点においては、それらを度外視した明度だけの情報で勝負するのが男気というものです(???)。

 意味のわからないことを言っていますが、モノクロ写真にはもう一つ大事な効果があると考えています。それは、受け手の想像力を掻き立てる効果です。モノクロ写真からは色相の情報が脱落しています。これは視覚と大きく異なる点です。それによって、写真に写っている光景がいったいどんなものなのか?、自分がその場にいたらどのように見えるのだろうか?、撮影者はこの光景の何に着眼しているのか?、といったことを想像するきっかけになろうと思います。無論、写真を見る人に注目してもらえるような力を持った写真でない限り、そんな想像を巡らせてもらうことなんてなかなかできないわけですが…。

 それと同様に、カラーで見えているファインダーの視界からモノクロになった写真を想像するという行為も楽しいものです。これまでモノクロ写真を撮る機会はあまり多くなかったので、構図の中の配色のバランスを考える感覚はまだ育っていないのですが、こればかりは慣れていくほかないでしょう。色があるせいで、視覚していた明暗と写真として出力される明暗とが異なることがあるのは面白いです。


 先日、東京都写真美術館で開催されている「深瀬昌久 1961-1991 レトロスペクティブ」という写真展を見に行きました(リンク)。展示されている作品は全てモノクロ写真です。「私写真」というジャンルのさきがけと言われる深瀬昌久という写真家については全く知らなかったのですが、この展覧会のポスターを見て、私はとても興味を惹かれました。このポスターの写真の構図と光景の意味がよくわからなくて、想像力を働かされたからです。モノクロ写真の魅力の好例だと思います。個々の作品について感想は述べません、というか、私も知識が乏しいので語るに難しい写真が多く、なんとも言えません。こういう先駆的な試みをしていた写真家がいたのだな、というのが全体的な感想です。そもそも、著名な写真家であると言っても、その作品のすごさを理解するのは到底難しい、というのが私の考えです。私はまったく学が足りていないのです。


 てなわけで、モノクロ写真っていいよね、と日頃ぼんやり考えていることを無理やりこの記事で言語化してみました。私は考えが浅いので、こうして文章にしてみると全く意味不明になってしまいますね。こんな怪文書をインターネットで公開してなんの意味があるのだろうか、だなんて思ってしまいます。まあ、そんな考えをしている人もいるんだよ、ということで、どうかお許しください。(ここまで読んでる人、いるのかな?)


 K-3 Mark III Monochromeで撮影した写真をちょっとだけ掲載しておきます。モノクロ専用機とだけあって、やはり階調が深いような気がします(気がするだけ)。カスタムイメージはスタンダード・ハード・ソフトの三種類だけで、撮って出しのJPEG画像はあまり好みではない印象です。RAW現像でいろいろいじってみると楽しいのですが、これはこれで深い沼です(笑)。

開梱後すぐに撮った一枚。暗部の階調が豊かで小躍りしました。
(HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited, JPEG撮って出しをリサイズ)

光と影、って感じですね。
(HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited, RAW現像)

草むらですね。
(Voigtländer Apo-Lanthar 90mm F3.5 SL, RAW現像)

階段ですね。
(HD PENTAX-FA 43mmF1.9 Limited, RAW現像)


 行き当たりばったり、てくねちおでした。


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